2026年10月9日に公開された映画『汝、星のごとく』。原作者の凪良ゆうは、2020年と2023年に本屋大賞を二度受賞した作家です。映画をきっかけに「ほかの作品も読んでみたい」と思った人に向けて、主な作品と作風、読む順番を紹介します。各作品の結末には触れません。
凪良ゆうについて
1973年、滋賀県生まれ。京都市在住。2007年にデビューし、長くボーイズラブ(BL)小説の分野で作品を発表してきました。2017年の『神さまのビオトープ』から一般文芸にも活動を広げ、2019年刊行の『流浪の月』で2020年本屋大賞を受賞。2023年には『汝、星のごとく』で二度目の本屋大賞を受賞しました。
作風: 「正しさ」からこぼれた人を書く
凪良ゆうの小説には、繰り返し現れる主題があります。
- 名前のつかない関係。 恋人でも家族でも友人でもない、けれど本人たちにとっては何より大切な結びつき
- 外から見た「事実」と、当事者にとっての「真実」のずれ。 世間が事件や不倫や不幸と呼ぶものが、本人には違って見えている
- 親に守られなかった子ども。 早く大人にならざるをえなかった人が、自分の人生を取り戻していく過程
- 善意による傷。 悪意よりも、「あなたのためを思って」という言葉のほうが人を追い詰める
読んでいて苦しくなる場面も多いのですが、最後に残るのは「それでも自分で選んでいい」という感覚です。『汝、星のごとく』で胸をつかまれた人なら、どの作品にも同じ芯を見つけられるはずです。
『神さまのビオトープ』(2017年)
事故で夫を亡くしたうる波は、夫の幽霊と一緒に暮らしている。周りからは理解されない、けれど本人たちには確かな幸せの形を描く連作短編集です。のちの作品に通じる主題が、すでにここにあります。
『流浪の月』(2019年)
9歳の更紗は、公園で出会った大学生・文の部屋で2か月を過ごします。世間はそれを「誘拐事件」と呼びました。15年後、二人は再会します。「被害者」と「加害者」とされた二人にしか分からない関係を描く、著者の代表作です(リンク先は創元文芸文庫版)。
『わたしの美しい庭』(2019年)
屋上に「縁切り神社」があるマンション。血のつながらない統理と小学生の百音、その隣人たち、そして神社を訪れる人々の物語です。世間の「ふつう」から少し外れた人たちが、穏やかに暮らす姿を描きます(リンク先はポプラ文庫版)。
『滅びの前のシャングリラ』(2020年)
1か月後、小惑星が衝突して地球は滅びる。学校でいじめられている高校生、人を殺したヤクザ、恋人から逃げ出した母親。うまく生きられなかった人たちが、最後の1か月をどう過ごすかを描きます(リンク先は文庫版)。
『汝、星のごとく』(2022年)
瀬戸内の島で出会った高校生の暁海と櫂。親に振り回されて育った二人が惹かれ合い、すれ違い、それぞれの人生を選び直していく15年の物語です。2026年10月に映画が公開されました(リンク先は講談社文庫版)。
『星を編む』(2023年)
『汝、星のごとく』で語られなかった物語を収めた続編。北原先生の過去を描く「春に翔ぶ」、編集者たちの「星を編む」、本編のその後の「波を渡る」の3編です。本編の結末を前提にしているので、必ず本編のあとに(リンク先は講談社文庫版)。
『多類婚姻譚』(2026年)
結婚をテーマにした5編の連作短編集。セクシュアリティ、お金の感覚、世代による価値観の違い。いちばん近くにいる他人であるパートナーと、分かり合えなさにどう向き合うかを描きます。2026年7月発表の第175回直木賞で候補になりました。
映像化された作品
- 映画『流浪の月』(2022年5月公開) … 李相日監督。広瀬すず、松坂桃李が主演し、横浜流星も出演
- 映画『汝、星のごとく』(2026年10月公開) … 藤井道人監督。横浜流星、広瀬すずが主演
- ドラマ『美しい彼』(2021年〜) … BL小説『美しい彼』(キャラ文庫)が原作。萩原利久、八木勇征が主演し、2023年には劇場版も公開されました
読む順番のおすすめ
映画『汝、星のごとく』から入った人
- 『汝、星のごとく』 … 映画で描かれなかった心の内側を読む
- 『星を編む』 … 北原先生の過去と、物語のその後
- 『流浪の月』 … 同じ「世間の目と当事者の真実」を、別の形で
重い話は少し休みたい人
- 『わたしの美しい庭』 … 作品のなかでは穏やかな読み心地
- 『神さまのビオトープ』 … 短編の連作なので区切って読める
一気読みしたい人
- 『滅びの前のシャングリラ』 … 設定の強さで最後まで引っ張られる
- 『流浪の月』
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