2026年7月25日 公開・受賞発表は2026年7月15日
2026年7月15日、第175回の芥川賞・直木賞の選考会が開かれ、受賞作が発表されました。候補作紹介の記事で予想を立てていた方は、そろそろ答え合わせのタイミングです。直木賞は朝倉かすみさんの『けんぐゎい』、芥川賞は小砂川チトさんの『ゾンビ回収婦』。偶然にも、どちらも「3度目の候補」での受賞という共通点があります。じっくり時間をかけて評価をつかみ取った2作、その中身と作家の歩みを掘り下げます。
江戸時代後期の江戸を舞台にした時代小説。幼い頃の病で顔に痘痕(あばた)が残った姉・ふゆと、恵まれた容姿を持つ妹・りよ。早くに父を亡くした二人は、ふゆは手習師匠のもとへ、りよは船宿の奉公へと、対照的な道に出されていきます。師匠の養子から理不尽な仕打ちを受けたふゆは、ある女医者との出会いを機に、自分の人生を自分の手で切り拓いていく——。容姿への視線、家父長制、出産といった主題を、江戸という舞台を借りて描き出した作品です。
朝倉さんにとっては現代小説で評価を重ねてきたキャリアの中で、初めて本格的に取り組んだ時代小説でもあります。選考委員全員の票を集める満票での受賞となりました。3度目の候補での受賞、そして直木賞の女性受賞者としては史上最年長という点でも話題になっています。
AIの普及によって夫婦そろって仕事を失った「わたし」。夫がVRヘッドセットをつけた先はゾンビアクションゲームの世界で、なぜか「わたし」はそこで、倒されたゾンビの死骸を黙々と片付ける掃除係として働き始める——。現実とVR空間を行き来しながら、「働くこと」や人間らしさ、社会の中に居場所を持つことの意味を見つめ直していく物語です。
選考委員を代表して講評した奥泉光さんは、VRと現実が混じり合う新しい虚構の世界を、スピード感のある文体と強い意志で立ち上げた点を高く評価しました。AIに仕事を奪われつつある人間が、その状況に過剰に適応しようとする姿を皮肉を込めて描いた、一種の社会批評として読むこともできるとの見方も示されています。
受賞発表前に、それぞれ5作ずつの候補作を紹介する記事を公開していました。「この作品が獲るんじゃないか」と予想しながら読んでいた方は、下のリンクから答え合わせにどうぞ。受賞作以外の候補作にも、まだまだ読む価値のある作品が揃っています。
受賞作を読んで、感想や考察を語り合いたくなったら。
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