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第175回芥川賞、受賞発表前に読んでおきたい候補作5選

2026年7月13日 公開・受賞発表は2026年7月15日

第175回芥川賞の候補作5作が出そろいました。受賞発表は直木賞と同じ7月15日。芥川賞は普段、文芸誌に掲載された短編・中編が対象のため「気になっても手に取りにくい」ことも多いのですが、今回は候補作の多くがちょうど単行本化されたタイミングと重なっていて、実は読みやすい回でもあります。結果を知る前に読んで自分なりの予想を立てるなら、残された時間はもう多くありません。

そもそも芥川賞とは

芥川賞(正式名称: 芥川龍之介賞)は、文藝春秋の創業者・菊池寛が、友人だった作家・芥川龍之介を記念して1935年(昭和10年)に、直木賞と同時に制定した文学賞です。現在は公益財団法人日本文学振興会が主催し、選考会は直木賞と同じく年2回、上半期分は7月に、下半期分は翌年1月に開催されます。

対象になるのは、新進作家による純文学の短編・中編小説。よく並べて語られる直木賞は、中堅作家によるエンターテインメント小説(単行本)が対象という違いがあります。候補作はまず『群像』『新潮』『文學界』『文藝』といった文芸誌に掲載され、受賞発表の前後に単行本化されるのが通例です。今回の第175回は上半期分にあたり、2026年7月15日に選考会が開かれ、その日のうちに受賞作が発表される予定です。

『ゾンビ回収婦』小砂川チト

第65回群像新人文学賞作家の最新中篇

AIによって仕事を追われた「わたし」の日常に、ある日もうひとつの現実が重なって見え始める。夫がVRヘッドセットをつけた先はゾンビアクションゲームの世界で、なぜか「わたし」はそこで、倒されたゾンビの死骸を黙々と片付ける掃除係になっていた——。AIと人間の境界が溶けていく不穏さを、独自の言語感覚で描く一作。

著者について

小砂川チトは1990年岩手県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院社会学研究科心理学専攻修了。2022年「家庭用安心坑夫」で第65回群像新人文学賞を受賞しデビューしました。

『悪い血』鈴木涼美

芥川賞候補 3度目

妊婦検診で思いがけず血液を採取された「私」は、その"失われた血"を取り戻すため、病院へと足を向ける。これまで何も選ばずに生きてきたのは、選んだ瞬間に過去を罰せられる気がして怖かったから——選ぶことへの恐れと、選ばずにきた人生のツケを静かにあぶり出す一作。

著者について

鈴木涼美は1983年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、東京大学大学院修士課程を修了。エッセイ・小説の両方で自身の経験を題材にした作品を発表し続けており、今回で3度目の芥川賞候補となります。

『丹心/まごころ』仁科斂

発売は選考会当日

中国各地に立ち並ぶ、不動産不況が生んだ廃墟マンション群。建築家のもとに、その一棟を美術館に変えてほしいという謎めいた依頼が舞い込む。指示を受けて大陸に渡った助手は、資本と欲望が渦巻く建設現場のただ中で、想像を超える混沌に呑まれていく。単行本の発売日は選考会と同じ7月15日で、候補作の中でもっとも入手が難しい一冊です。

著者について

仁科斂は1994年生まれ。香港・上海・ロンドンで育ち、オックスフォード大学PPEコース卒業後、東京大学大学院総合文化研究科に在籍しながら執筆を続けています。2024年「さびしさは一個の廃墟」で第56回新潮新人賞を受賞しました。

『ソリティアおじさんがいた頃』村司侑

第131回文學界新人賞受賞作・初候補

京都の味噌屋に勤める「わたし」のもとに、かつて心の中で「ソリティアおじさん」と呼んでいた人物の訃報が届く。通夜に足を運んだことをきっかけに、なんとなく続けてきた恋人との関係や、先の見えない仕事について、ようやく踏ん切りをつけようとし始める——。

著者について

村司侑は1979年生まれ。九州大学文学部卒業、京都府在住。本作で第131回文學界新人賞を受賞し、そのまま芥川賞候補に選ばれました。デビュー作にしていきなりの候補入りです。

『アンチ・グッドモーニング』八木詠美

太宰治賞作家の新作

ある日突然、眠れなくなった「わたし」。ウェルビーイングを掲げる職場、丁寧な暮らしを勧めてくる夫、素性の知れないeラーニング講師——誰もが良かれと思って差し出す「前向きさ」の圧力から逃れようと奔走するうち、気づけば不思議な世界に迷い込んでいた。

著者について

八木詠美は1988年長野県生まれ。2020年、長編デビュー作『空芯手帳』で第36回太宰治賞を受賞。現代社会の「前向きさ」の息苦しさを独特のユーモアで描くのが持ち味の作家です。

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